レビュー構造化データでリッチスニペットを獲得する方法
検索結果に星評価やレビュー件数が表示される「リッチスニペット」は、ユーザーの目を引く大きな要素となり、クリック率(CTR)向上にも寄与するといわれています。特にECサイトにおいては、商品の魅力を視覚的に示せるレビューの星マークや評価点数が大きな武器となるでしょう。そこで本記事では、レビュー構造化データを用いてリッチスニペットを獲得するためのポイントを、ECサイト運営の観点も交えながら解説していきます。
Contents
レビュー構造化データとは
まず、レビュー構造化データとは何かを整理しましょう。これは、ウェブページ上のレビュー情報を検索エンジンに伝えるために、特定の形式(スキーマ)でマークアップした追加コードのことを指します。Googleなどの検索エンジンは、ページのレビュー内容を理解したうえで、検索結果に星評価や件数、評価平均などを表示することがあります。これが一般的に「リッチスニペット」「レビュースニペット」と呼ばれるものです。
構造化データの規格としては、Schema.orgで定義された「Review」スキーマや、それと組み合わせて使う「Rating」「AggregateRating」スキーマなどが代表的です。JSON-LD形式、Microdata形式、RDFa形式など、幾つかの書き方がありますが、GoogleはJSON-LDを推奨しており、多くの場合はJSON-LDでの実装が主流になっています。
ECサイトで商品レビューを掲載している場合、この構造化データを実装することで、検索結果に星マークやレビュー数などが表示される可能性が高まります。その結果、商品を探しているユーザーの注目を引き、サイトへのクリック誘導につながりやすくなるわけです。
レビュー構造化データがECサイトにもたらすメリット
ECサイトには多くの商品が存在し、それぞれにユーザーが投稿するレビューが集まります。たとえば家電や日用品など、幅広いジャンルの商品レビューがあり、購入の判断材料として活用するユーザーは非常に多いと言えます。レビュー構造化データの実装がECサイトにもたらすメリットを大きく分けると、以下のようになるでしょう。
1. 検索結果での視認性向上
競合の商品ページが多く並ぶ検索結果において、自社の商品ページが星評価付きで表示されると、ユーザーの目に留まりやすくなります。星の表示は検索結果全体の中で視覚的にも目立ち、情報量も多いため、自然とクリックを誘導する効果が期待できます。
2. 信頼感や安心感の付与
レビューや評価があることで、その商品やサイトの信頼性をユーザーに伝えられます。実際の購入者がつけた評価や感想が可視化されていると、「この商品を買って失敗するかもしれない…」という不安を和らげる効果が高まります。ECサイトでは、星4以上の商品を優先的に探すユーザーも多いため、良い評価が付いていることを示せればコンバージョン(購買)の可能性を高めるでしょう。
3. CTR(クリック率)の向上
星や評価スコアが目立つと、ユーザーが興味を持ってクリックする確率が上昇します。構造化データ自体は直接的な検索順位の要因にはなりませんが、CTRが上がることで検索エンジン上の存在感を高め、長期的にはサイト全体のトラフィック増加にもつながります。CTRが増えれば、より多くのユーザーを商品ページへ誘導でき、売上アップも期待できます。
4. 購買行動を後押しする
実際にページへ流入してもらった後、そのまま商品購入へと繋げるためには、ユーザーの背中を押すコンテンツが必要です。レビューはユーザー同士の「生の声」を通して、他の販促文よりも説得力を持ちやすい情報となります。適切に構造化データを実装してレビューを分かりやすく見せれば、購入率の向上にも効果的です。

Google公式ガイドラインと最新情報
レビュー構造化データを導入して、リッチスニペットの恩恵を得ようとする際、最も大事なのはGoogleの公式ガイドラインを遵守することです。ガイドラインを無視したマークアップを行うと、リッチリザルトが表示されないばかりか、最悪の場合は手動ペナルティを受けて検索結果からの流入自体が落ち込むリスクもあります。
ガイドラインの要点
- 自社商品・サービスに対する「自己レビュー」の星評価は対象外
2019年の大きな変更として、自社の店舗やビジネスに対するレビューはリッチリザルトで星評価が表示されなくなりました。「Product」や「LocalBusiness」などのスキーマに該当するコンテンツであっても、自社に対するレビューは除外対象となっています。一方、ECサイトで扱う商品(自社で製造しているものではなく、外部ブランドの商品など)にユーザーが書いたレビューなら問題ありません。 - Schema.orgのReviewスキーマを正しく使う
スキーマの正しい使用が必須です。たとえば単一のレビューでは「Review」、複数レビューの集計は「AggregateRating」といったように、用途に応じて適切なタイプを使います。特に星の平均評価やレビュー件数を表示する場合は、aggregateRating
プロパティを正しくマークアップしなければいけません。 - ページ上に存在しない情報をマークアップしない
架空のレビューや評価を構造化データにだけ書き込む行為はスパム扱いとなります。あくまでページ内に表示される正しい情報と一致していることが大前提です。例えば平均評価が4.5であるにもかかわらず、5.0と偽装してマークアップすると、手動ペナルティを受ける可能性が高まります。 - 必須プロパティの不足に注意
レビュー本文(reviewBody
)、レビュアーの名前(author
)、レビュー対象(itemReviewed
)、星評価(reviewRating
)など、必須(あるいは推奨)とされる項目をしっかりマークアップしましょう。これらを欠落させると、リッチリザルトが表示されない原因になります。
最新動向:具体的なコメントの推奨
2024年ごろからの傾向として、星評価(数値)だけでなく、レビュアーの簡単なコメントや投稿日時など詳細な情報も含めてマークアップすることが推奨されています。つまり、単純に「★★★★☆(4.0)」と数値だけを構造化データに入れるのではなく、「○○さんによるレビュー」「実際に使用して良かった点・悪かった点」など、ユーザーが信頼を寄せられる具体的なレビュー本文を盛り込むほうが好ましいとされています。これはGoogleが常に「ユーザーファースト」の観点を重視していることの表れと言えるでしょう。
実装時の注意点とベストプラクティス
ECサイトでレビュー構造化データを実装する際、多くのポイントを押さえておく必要があります。ここではガイドラインを守ったうえで、なるべく検索結果への表示を勝ち取りやすくするためのベストプラクティスを解説します。
スパム判定を避ける方法
- ユーザーから正当に収集したレビューを使う
他のサイトから転載した口コミや、存在しないレビューを捏造する行為は厳禁です。必ず自社ECサイト内で実際に投稿された内容をマークアップしましょう。 - 「最新であること」と「正しい記述」であること
何年も前のレビューだけを構造化データ化しても、ユーザーにとって役に立たない可能性があります。なるべく直近のレビューも含め、情報の鮮度を高めることが望ましいです。加えて、商品名・評価値・レビュアー情報が正しく対応しているか、ミスがないかも入念に確認します。 - ページ固有のレビューだけを対象とする
複数の商品レビューを一括で表示しているページなどでは、そのページの主題になっていない商品に対するレビューをマークアップすると混乱のもとです。Googleは「ページの主題」となるアイテムのレビューだけを構造化データ化することを推奨しています。
構造化データの形式選択
- JSON-LD
Googleが推奨しており、HTMLのコードに干渉しにくいため、実装ミスが起きにくいです。<script type=\"application/ld+json\">
タグ内にJSON形式でスキーマ情報を記述します。ページ内のDOM構造を大きく変えずに済むので、既存のECサイトに導入する場合も比較的スムーズでしょう。 - Microdata
HTMLタグ自体にitemprop
属性などを付与していく方式です。ページの大幅な修正が必要なケースが多く、構造が複雑なサイトではエラーが出やすい傾向があります。とはいえ、もともとMicrodataベースで作っているサイトもあるため、その場合は無理にJSON-LDに切り替えなくても問題はありません。
必須プロパティを網羅する
実装にあたって重要なのは、Schema.orgで定められた「必須プロパティ」を漏れなく記述することです。レビュー用の主なプロパティは以下のとおりです。
- itemReviewed: レビューの対象となる商品情報(例:
\"itemReviewed\": { \"@type\": \"Product\", \"name\": \"○○\" }
) - reviewBody: レビュー本文(例: ユーザーが実際に書いた感想)
- reviewRating: レビューの評価(
ratingValue
、bestRating
、worstRating
など) - author: レビュアーの名前(個人名やニックネーム)
- datePublished: レビューが投稿された日付
複数のレビューをまとめて表示する場合には、aggregateRating
を使って平均値やレビュー件数をマークアップします(例: \"ratingValue\": \"4.2\"
, \"ratingCount\": \"57\"
)。なお、商品やサービスを示す@type
が適切かどうかもチェックしてください。Product
のほかに Recipe
や Book
などもあり、取り扱うアイテムに応じて指定が異なります。

レビュー構造化データがもたらすSEO効果
レビュー構造化データを取り入れると、検索順位そのものが直接上昇するわけではありません。しかしながら、リッチスニペットによる視覚的な訴求力が高まり、結果的に以下のような形でSEO上のメリットを得やすくなります。
CTRの改善
リッチリザルトが表示されると、通常のテキストスニペットよりもクリックされる可能性が増します。たとえば検索結果に同じような商品ページが並んでいても、星評価や「レビュー件数:100件」などの情報がついているだけで、「これだけ多くの人が評価しているなら安心だ」「評価が高そうだから見てみよう」という心理が働きます。CTRが改善すると、結果的に自サイトの流入数が増え、売上機会の創出にも貢献するでしょう。
ユーザー行動のデータ蓄積
レビュー構造化データを導入すると、Search Consoleの「検索パフォーマンスレポート」でリッチリザルトが表示されたクエリやCTRなどを確認しやすくなります。どのキーワードで星評価が出やすいのか、どの商品の評価がユーザーの注目を集めているのか、といった情報を把握しやすくなるため、ECサイトの運営戦略にも役立つでしょう。
間接的なランキングシグナルへの影響
厳密には「構造化データを入れたから検索順位が上がる」という直接効果はGoogleが否定しています。しかし、CTRが高まった結果、ユーザーがサイトに長く滞在し、コンテンツをよく読んでくれるようになると、サイト全体の評価向上につながる可能性は否定できません。特に競合が激しいEC分野では、リッチスニペットの有無で売上やアクセス数に大きな差が出ることがあります。
ECサイトにおける具体的な活用例
ECサイトには多彩な商品が並び、レビューの集め方や表示の仕方も多様です。ここではレビュー構造化データを実装するための具体的なシチュエーションを考えてみましょう。
単品販売商品へのレビュー
家電など、1ページにつき1つの商品を扱う場合が最もシンプルです。商品ページ下部にレビュー投稿欄があり、ユーザーが星評価やコメントを投稿し、それをそのまま構造化データに反映する形です。たとえばテレビやパソコン、スマホなどのレビューをページ内で表示しているなら、そのままReview
やAggregateRating
でマークアップすると、検索結果に星が表示されやすくなります。
バリエーション商品のレビュー
色やサイズ違いなど、同一商品のバリエーションが複数ある場合は、レビューをどのように集計するかがポイントになります。基本的には「商品としての評価」をまとめて表示する場合が多いでしょう。個別バリエーション(カラーA、カラーB)に対するレビューを集約して、1つの平均評価値としてaggregateRating
を記述する形がよく使われます。
複数の商品を一括で紹介するページ
ランキング形式のブログ記事や、カテゴリーページなど、複数の商品を一挙に紹介する場合は、各商品ごとに個別のレビューをマークアップする必要があります。一括で「このページに掲載された商品の平均星評価は4.0です」などとまとめるのは推奨されません。ページの主題がはっきりしないと、Googleもどのアイテムのレビューなのか判定できず、リッチスニペットが表示されにくくなるリスクがあります。
ユーザー投稿を集める仕組み
ECサイトの場合、購入者のみがレビューを投稿できる仕組みにしているところが多いです。こうした仕組みでは、偽造レビューや虚偽評価の混入リスクを減らせる利点もあります。Googleにとっても、購入者本人のリアルな意見が書かれている点は評価されやすい要素となるでしょう(ただし、これをもって直接ランキングが上がるわけではありません)。
星評価の表示とCTR向上の事例
実際にレビュー構造化データを正しく実装した場合、どの程度クリック率が上がるのか。これはサイトのジャンルや商品の知名度、競合状況などにも左右されるため一概には言えません。しかし、多くの事例で「通常のスニペットよりもCTRが上昇した」という報告があります。
たとえば、とある海外事例では、星評価付きのリッチスニペットが表示されたページのCTRが、表示されなかったページと比べて約2倍になったという報告があります。日本のECサイトでも「星評価が表示され始めてからCTRが30%増加した」「レビューが豊富なページほどコンバージョン率が高い」という話は珍しくありません。こうした成果を最大化するには、星評価だけでなくレビュー本文にも一貫した質の高さが求められます。「このサイトには価値のあるレビューが集まっている」とGoogleに判断されることが、リッチリザルトを安定して獲得するポイントとなるのです。
構造化データ導入後の測定・運用
レビュー構造化データを導入したら、それが本当に効果を発揮しているかどうかをきちんと測定し、運用を続けていくことが大切です。具体的には以下のようなステップがあります。
Search Consoleでのエラー確認
Google Search Consoleには、構造化データに関するレポートが用意されています。導入後にエラーや警告が発生していないか確認し、問題があれば修正を行いましょう。たとえばreviewRating
プロパティが期待どおりの形式で記述されていなかったり、必須項目が抜けていたりすると、リッチリザルトが表示されません。
CTRやコンバージョン率の比較
導入前後で検索結果のCTRに変化があったかどうか、アクセス解析ツールやSearch Consoleの「検索パフォーマンス」レポートでチェックします。さらに、実際にそのページからの売上やコンバージョン率がどう変化したかをECサイトの管理画面などで追跡することが重要です。もし改善が見られれば、レビュー構造化データの恩恵を受けている証拠と言えるでしょう。
レビューの継続的な収集と更新
レビュー構造化データを導入しただけで安心せず、継続的にユーザーからのレビュー投稿を促す取り組みも欠かせません。購入後一定期間が経ったユーザーにメールを送って感想をお願いしたり、レビュー投稿でポイント付与するなどの施策を検討してみましょう。定期的に新しいレビューが集まることで、ページの鮮度が高まり、より充実した評価情報を検索エンジンやユーザーに示せます。
レビュー構造化データ導入後に気をつけたいこと
構造化データの運用を続けるうちに、いつの間にかルールに抵触しているケースが出てくることもあります。また、Googleがガイドラインを更新することもあるので、下記の点に留意しましょう。
ガイドラインの定期確認
Googleは年単位、または不定期でリッチリザルトに関する仕様をアップデートします。2024年にはレビュー本文の充実を推奨する動きなどが確認されていますが、今後さらに細分化される可能性もあります。ECサイト運営者はGoogleの公式アナウンスを定期的にチェックして、実装方法を修正・最適化する必要があります。
品質維持
大量のスパムレビューや、いわゆる「サクラレビュー」が混在するサイトでは、ユーザーが不信感を抱くだけでなく、検索エンジンにとってもマイナス評価の原因となり得ます。レビュー構造化データを充実させるうえでも、質の高いレビューを増やし、不正なレビューを排除する仕組みづくりが肝要です。
過去商品の取り扱い
シーズン商品のように、すでに在庫がない商品ページでもレビューが残っていることがあります。過去の商品ページをどう扱うかはECサイト運営上の課題ですが、既に販売終了した商品でも人気があったものは検索される可能性があります。そうしたページにもレビュー構造化データが残っている場合、ユーザーが見たときに「この商品はもう買えない」と分かりやすいように表記する配慮が必要です。ユーザーが混乱しないよう、「この商品は現在在庫切れですが、類似商品としてこちらがあります」と誘導するといった工夫も考えられます。

まとめ
レビュー構造化データによってリッチスニペット(星評価やレビュー件数など)を獲得することは、ECサイトの検索結果における視認性と信頼性を高め、CTRや売上増加に結びつく可能性が十分にあります。ただし、実装にはいくつかのガイドラインや注意点があり、それらを無視すると逆効果になる恐れもあります。
- ガイドライン順守が大前提:Google公式のポリシーをしっかり読み込み、自己レビューや架空評価などをマークアップしないよう厳格に管理する
- 鮮度と正確性の高いレビュー情報:実際にユーザーが投稿したコンテンツと構造化データの内容が一致していることが重要
- CTRや売上増加への寄与:レビューや星評価が表示されると、検索結果上での訴求力が上がり、ECサイトの流入・コンバージョンにつながるケースが多い
- 導入後の継続的な運用:Search Consoleなどでエラーをチェックし、常にガイドラインや仕様変更に対応していく必要がある
- レビュー収集の仕組みづくり:顧客の生の声を魅力的に見せるためには、レビュー自体を集めやすい施策が欠かせない
ECサイト運営者にとって、星の見栄えはただの飾りではなく、ユーザー体験(UX)の向上にもつながる重要な要素です。リッチスニペットとして表示された星評価やレビュー数は、消費者にとって大きな購入動機になりえます。正しく構造化データを実装し、信頼度の高いレビューを集め続けることで、商品ページの訴求力を高めるとともに、長期的なサイト全体の評価向上にもつなげていきましょう。