ブランドクエリを増やすためのコンテンツ戦略
企業名やブランド名で検索される「ブランドクエリ(指名検索)」を増やすことは、オンライン上での集客を強化するうえで非常に効果的な手段です。特に自社ECサイトの売上を伸ばすためには、一般的な商品検索に頼るだけでなく、自社ブランドの名前で積極的に検索されるようになることが大きなメリットをもたらします。なぜならブランドクエリを行うユーザーは既に高い購買意欲や信頼感を持っており、コンバージョン率が高い傾向があるからです。
本稿では、ブランドクエリを増やすことがECサイトにもたらす恩恵や、具体的なコンテンツ戦略・SEO施策について詳しく解説します。また、最新のSEOトレンドや国内企業の成功事例も踏まえつつ、ブランドクエリ増加の効果を最大化する方法を考えていきます。
Contents
ブランドクエリ(指名検索)とは
ブランドクエリの定義
ブランドクエリとは、企業名・サイト名・商品ブランド名など固有の名称を伴う検索キーワードを指します。たとえば「ユニクロ」「Apple」といった明確なブランド名を含んだ検索や、「ユニクロ 2025年 新作コート」など、ブランド名+一般語の組み合わせも含まれます。これらはGoogleなどの検索エンジン上では「ナビゲーションクエリ(またはウェブサイトクエリ)」として扱われる場合が多く、ユーザーはすでに目的のサイトを知っていて訪問しようとしているか、あるいはそのブランドを強く意識して商品を探している状態にあります。
一般検索との違い
一般キーワード(「コート おすすめ」「レディース Tシャツ 人気」など)による検索では、どのブランドの商品を買うかまだ絞り切れていないユーザーが多く、複数の候補を比較検討しながら購入先を決める傾向があります。一方、ブランドクエリの場合はブランドを指定して商品情報やサイトを探しているため、購買意欲が比較的高い状態にあることが多いとされています。企業やECサイト側から見れば、いきなり自社サイトに訪問してもらう機会となり得ますし、競合に取られるリスクも小さくなります。
Google検索におけるブランドクエリの扱い
Googleは2012年に申請した特許(Ranking search results)や、検索品質評価ガイドラインの内容から、「ユーザーが特定ブランドを求める検索は重要なシグナルになる」と示唆しています。ブランド名で検索される頻度が多い企業・サイトは「ユーザーに強く支持されている」「認知度が高い」とみなし、検索順位にプラス効果を与えることがあると考えられています。さらに、指名検索数の増加は競合サイトとの差別化要因にもなり得るため、SEO戦略上で無視できない要素となっています。

なぜブランドクエリが重要なのか
ブランド力の可視化
ブランドクエリの増加は、ユーザーがその企業や商品を覚え、信頼し、自発的に検索するほどの魅力を感じているという証拠です。いわば「オンライン上におけるブランド力の可視化指標」であり、これが多い企業は業界内でも高い認知とファンベースを持っていると推測できます。
コンバージョン率の向上
ブランドクエリを行うユーザーは、すでに特定ブランドや商品に対してポジティブな印象や購入意欲を持っているため、コンバージョン率(CVR)が一般検索と比べて高くなる傾向があります。ECサイト運営では、訪問者がどのキーワードから来たかを分析することで、指名検索経由の売上が多いブランドのほうが継続的・安定的に成果が出やすいことがわかります。
広告費削減のメリット
一般キーワードで多く集客しようとすると、リスティング広告費などのコストがかさむ場合があります。ところが、ユーザーが「ブランド名+商品名」で検索してサイトを訪れてくれる場合は、広告出稿の必要がなく、無駄なコストを抑えつつ高いCVRを得られるというメリットがあります。オーガニック検索でブランドクエリからの流入が増えれば、そのぶん広告費をほかの施策へ回せるため、マーケティング予算の最適配分が可能になります。
競合への流出リスクを低減
ユーザーが漠然と「レディース コート おしゃれ」「スマホ おすすめ」と検索すると、上位には競合のECサイトや総合通販モールなども表示されます。ユーザーの購入意思が固まっていない段階では、価格比較や他社の特典などに惹かれてしまい、最終的に競合サイトで購入されるリスクも高まります。しかし、「○○(自社ブランド) コート」と検索している時点で、ユーザーは競合他社の製品よりも自社の製品に関心を強く持っている可能性が高いと考えられます。こうした状況では競合へ流出してしまうリスクは相対的に低くなり、購買につながる確率が高くなります。
ECサイト運営におけるブランドクエリ増加の効果
長期的な顧客基盤の形成
ECサイトでの売上を安定させるためには、短期的なトラフィックの増減だけでなく、長期的にリピート購入してくれるファン層を増やしていくことが不可欠です。ブランドクエリが増えるということは、ユーザーが自社ブランドや商品を強く意識し、何度も指名して訪問している可能性を示します。こうしたユーザーは、ECサイトでの買い物が満足度の高い体験だった場合、再びブランド名で検索して訪れるリピーターになりやすい傾向があります。
価格競争からの脱却
Amazonや楽天といった大規模モールに出店していると、同じ商品カテゴリーで数多くの競合と比較されやすく、価格競争に陥りがちです。一方、自社ブランドで直接ECサイトに訪問してもらえるようになると、ただ安い商品を探すのではなく、「○○ブランドの商品だから欲しい」と思わせることができ、ブランド独自の価値を訴求できます。その結果、価格比較だけに囚われないユーザーが増え、適正な利益率を確保しながら売上を上げやすくなります。
他チャネルへの誘導
指名検索で自社サイトに来てもらうと、関連コンテンツへスムーズにアクセスしてもらう機会が増えます。たとえばECサイトに滞在したユーザーをメルマガやLINE公式アカウントに登録させる、SNSをフォローしてもらうなど、複数のチャネルでのコミュニケーションが進みます。こうして接点を増やすことで、再購入や口コミ拡散に繋がる「ファン化」のステップがより強固になるのです。
ブランドイメージの確立
ECサイトが単なる商品購入の場としてだけではなく、ブランド価値や世界観を発信する場として機能すると、ユーザーの中に「このブランドは信頼できる」「独自の魅力がある」というイメージが醸成されます。ブランドストーリーやコンセプトを効果的に伝えられるECサイトであれば、ユーザーはその体験を記憶に留め、再び検索する際にブランド名を思い出しやすくなります。結果的に指名検索数が増え、さらにブランドイメージも強固になるという好循環を生み出します。

ブランドストーリーや専門知識の発信による指名検索促進
ブランドストーリーが与えるインパクト
ユーザーが商品を選ぶ際に重視するのは、機能や価格だけとは限りません。「創業者の思い」「開発の背景」「ブランドが目指す世界観」といったブランドストーリーに共感し、ファンになるケースは少なくありません。特にECサイトにおいては、実店舗と比べて直接スタッフや空間からの情報を得る機会が少ないため、コンテンツを通じてブランドの魅力を丁寧に伝えることが重要です。
ストーリーに共感したユーザーは、そのブランドを「自分の価値観に合う」「他にはない個性」として記憶し、自然にブランド名で再検索してアクセスしたり、SNSで共有したりするようになります。これがブランドクエリの増加に直結する大きな要因となります。
専門知識・ナレッジ発信の効果
たとえば、アパレル系ECサイトならファッションのコーディネート術、食品系ECなら素材や栄養に関する詳しい解説、ガジェット系ECならテクノロジーの最新情報など、ユーザーが求める専門知識をまとめた記事や動画を発信すると、サイトの権威性が上がります。ユーザーは「このサイトを見れば自分が知りたい情報が手に入る」と認識し、「○○(ブランド名) コーディネート例」などの形で指名検索を行うようになります。特にGoogleでは、E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)を評価指標として重視しており、専門性・権威性を示す情報発信は中長期的なSEO効果の面でも大きな強みになります。
具体的なコンテンツの事例
- 創業ストーリー記事: どのような想いでブランドを立ち上げたのか、創業者のエピソードを交えて紹介する。ユーザーの感情に訴えかけ、「応援したい」「共感できる」と思わせる仕掛けにする。
- 製造・開発の舞台裏レポート: 工場や生産現場の写真、動画を掲載して、他では知れないプロセスを公開する。ものづくりへのこだわりや安全・品質管理の取り組みをアピールすると、安心感と独自性を打ち出せる。
- 専門家監修のオウンドメディア: 栄養士やデザイナー、テック系エンジニアなどの専門家に監修を依頼し、ブランドサイトやオウンドメディアで専門的なコラムを定期発信する。ブランド名=専門家も認める信頼ある情報源、という認識をユーザーに与えられる。
ブランドクエリを増やす具体的施策
SNSやオウンドメディアとの連携
ブランドクエリを増やすためには、自社サイト以外のチャネルでも積極的に露出し、ブランド名を認知してもらう必要があります。SNSやオウンドメディアで話題性のあるコンテンツを配信することは、ブランド名を覚えてもらう大きなきっかけになります。実際、国内の事例でも「Twitterでバズったおかげで指名検索が急増した」「Instagramを活用したことでECサイトのアクセスが倍増した」という成功例が報告されています。
SNS運用のポイント
- 世界観・ブランドイメージを一貫させる: ECサイトと同じデザインや雰囲気をSNS上でも表現し、投稿のトーン&マナーを統一する。
- 商品写真以外のコンテンツも交える: ユーザー投稿(UGC)をリポストしたり、使用シーンのエピソードを発信するなど、多角的な内容で飽きさせない。
- ハッシュタグ戦略: ブランド名のハッシュタグを広めると、ユーザーが投稿する際に自然にブランド名を使ってもらいやすくなり、SNS検索からブランドクエリにつながる。
オウンドメディアの活用
- 専門情報発信を軸に: ユーザーが「これを読むためにわざわざブランド名を検索する」レベルの質と独自性を目指す。
- ロングテールキーワードを狙ったSEO記事: 一般キーワードで集客しながら、サイト内でブランドへの興味を喚起し、最終的に指名検索へ誘導する流れを設計する。
- ブランド認知度向上キャンペーン: オウンドメディア限定クーポンや、読者参加型のプレゼント企画などを用意し、ブランド名で検索&訪問してもらう動機を作る。
イベントやキャンペーンでの訴求
オンライン完結だけでなく、オフラインイベントや期間限定キャンペーンを実施し、そこで印象的な体験を提供することでブランド名を強く印象づける方法も有効です。ユーザーに「またあのサイトで何かやっていないかな」と思わせ、後日ブランド名を検索してもらう仕組みを作れれば、オフライン施策がオンラインの指名検索を増加させる好循環を期待できます。
- ポップアップストアや展示会への出店: 体験型のブースを設置してブランド世界観を直接伝える。SNSやチラシで「○○(ブランド名)で検索」と訴求し、ECサイトへのアクセスを誘導する。
- 季節イベントやキャンペーン: クリスマスやバレンタインなどの季節のタイミングで、特設ページを設けて限定商品の先行予約を行う。キャンペーン名とともにブランド名を記憶してもらうことで、後日指名検索するユーザーが増える。
SEO的観点からのブランド検索強化
ブランドクエリを増やすためのSEO施策というと、単純に「ブランド名のキーワードを詰め込む」ことを想像されるかもしれませんが、実際にはそうした小手先のテクニックでは効果がありません。重要なのは、検索エンジンとユーザー双方に「このブランドに価値がある」と認められる状態を作り出すことです。そのためには、以下のようなポイントに注力する必要があります。
- 被リンク(バックリンク)の質・量: オウンドメディアの良質な記事やSNSで話題になった投稿を通じて、自然に他サイトからのリンクが集まると、ブランドサイトそのものが高い評価を得やすい。
- サイトの使いやすさ・表示速度: 指名検索で訪れてもサイトが使いにくい、表示に時間がかかるなどのネガティブ要素があると、ユーザーは離脱し再訪問もしない。ポジティブなユーザー体験こそがブランドクエリ増加を生む土台になる。
- 一貫性あるシグナル発信: SNSやYouTube、プレスリリース等、さまざまなチャネルで同じブランド名・ロゴ・ドメインを使って露出を重ねる。一貫したシグナルが多いほど、Googleもそのサイトを正しく認識・評価しやすくなる。

最新SEOトレンドとブランド検索との関連性
コアアルゴリズムアップデートとブランド力
Googleは定期的に検索アルゴリズムをアップデートし、よりユーザーの役に立つ情報を上位表示するように調整しています。近年のアップデートでは実績や信頼性、権威性の高いサイトが優遇される傾向が強くなっており、指名検索が多いサイトは「ユーザーが求める有力な情報源」とみなされやすいという声があります。実際、ブランドクエリの多い大手企業サイトが上位を固める場面も多く、アルゴリズムの変動にも耐えやすいといわれています。
E-E-A-Tとの関連
Googleはコンテンツを評価する際、E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)を総合的に見ていると公式に説明しています。ブランドクエリが多いことは、ユーザーが「そのサイトは専門性・信頼性が高く、有用な情報を得られる」と感じている証左とも解釈でき、間接的にE-E-A-Tの向上につながるといわれています。ECサイトであれば、商品レビューや利用者の声、専門家による推奨コメントなどを充実させることで、さらにE-E-A-Tを補強できるでしょう。
サジェスト汚染への対策
ネガティブなワードがブランド名とセットでサジェスト表示される「サジェスト汚染」は、指名検索による集客に大きなダメージを与える可能性があります。サジェストに「○○(ブランド) 苦情」「○○ 最悪」などと表示されると、ユーザーはクリックする前から不信感を持ち、サイト訪問を避けてしまうことがあるためです。実際には些細なクレームが炎上してサジェストに載る事例や、競合によるネガティブキャンペーンの噂もあり注意が必要です。
対策としては、ポジティブな情報を増やす(ユーザーに良質な口コミ投稿を促す、SNS発信を強化する)や、関連キーワードを監視して悪質な場合は法的措置やサジェスト非表示申請を検討するなどがあります。いずれにせよ、サジェストがネガティブに占領されるとブランドクエリ増加どころではなくなるため、早めの監視と対策が求められます。
指名検索数をモニタリング&KPI設定する方法
Google Search Consoleによる分析
ブランドクエリの増加を可視化する基本的なツールが、Google Search Console(GSC)です。GSCの「検索パフォーマンス」機能を使ってブランド名や商品名を含むクエリをフィルタリングすれば、表示回数(インプレッション数)、クリック数、CTR(クリック率)、平均順位などの指標を確認できます。これにより、ブランドクエリがどの程度検索され、どの程度の割合でクリックされているかを把握できます。
また、期間比較によって施策前後でどの程度数値が変化したかを追跡することで、キャンペーンやコンテンツ施策の効果を測定できます。CTRが極端に下がっている場合は、競合がブランド名を使った広告を出稿している可能性や、サジェスト汚染などのリスクも考えられるため、速やかに対処を検討しましょう。
Googleトレンドでの比較
Googleトレンドを使えば、自社ブランド名がどの程度の相対的な人気度を持っているかを時系列で確認できます。特定の期間を設定して、競合ブランド名と比較すると、自社ブランドがユーザーにどの程度興味を持たれているのか、キャンペーン時期に検索数がどのように上下したのかが視覚的にわかりやすく把握できます。大きな上昇ピークがあれば、そのタイミングと施策を結びつけて分析することで、今後の戦略立案にも役立ちます。
KPI設定のポイント
- 具体的な数値目標: 「ブランド名の検索回数を半年で50%増加」「ブランドクエリ経由CV率を5%から8%に引き上げる」など、わかりやすいKPIを設定するとチーム全体が同じ目標を共有しやすい。
- 期間設定: 指名検索の増加は一朝一夕では達成しにくいため、**中長期(半年〜1年程度)**を軸に計画を立てる。短期的なキャンペーン結果も見ながらPDCAを回す。
- 他指標との関連性: 単に指名検索の表示回数・クリック数だけを追うのではなく、売上やCV数、SNSでの言及数、リピーター率などとも関連づけて分析するのが望ましい。
実例:国内企業の成功例
SNS口コミを起点にブランドクエリ増加:シャトレーゼ
お菓子メーカーのシャトレーゼは、TwitterでのUGC(User Generated Content)を活用してブランド認知を飛躍的に高めた事例として知られています。ユーザー自身が商品を写真付きで感想を投稿することでTwitter上の話題が加速し、指名検索も急増したといわれています。具体的には、ある期間で口コミ投稿数が8倍に増え、それと連動する形で「シャトレーゼ」の検索回数も大幅に伸びたと分析されています。SNS×指名検索が相乗効果を生む典型的な成功例です。
オウンドメディアでのブランディング成功例:北欧、暮らしの道具店
雑貨やアパレルなどを取り扱うECサイト「北欧、暮らしの道具店」は、自社メディアで豊富な暮らしのコンテンツを発信し、読者をファン化することに成功しました。商品販売だけでなく、コラムやインタビュー、レシピなど多様な記事を展開することでブランドの世界観を確立し、「また読みたいからサイト名を直接検索して訪れる」というユーザーを増やしました。こうした戦略によって、一般検索だけに頼らずとも安定的に集客できる基盤を築いたといわれています。
人材系オウンドメディア事例:サイボウズ式
グループウェアなどを提供するサイボウズ株式会社が運営する「サイボウズ式」は、働き方や組織論などに関する深いコンテンツを多数配信しています。ユーザーは記事を通じてサイボウズという企業の思想や製品価値を理解し、興味を持つと「サイボウズ(サービス名)」で検索して公式サイトへ流入していきます。これによってリクルーティング面でも指名応募が増加し、従来の広告出稿よりもコストを抑えながら優秀な人材を集める成功事例が報告されています。
まとめ:ブランドクエリを育てることがECサイトの未来を拓く
ブランドクエリ(指名検索)の増加は、ECサイトが長期的に繁栄していくための重要なカギとなります。ユーザーが自発的にブランド名を検索するほどの認知と信頼を獲得できれば、競合との価格競争に巻き込まれにくく、広告費も節約しながら高いコンバージョン率を実現しやすくなります。
しかし、その道のりは一朝一夕ではありません。短期的に記事を大量生産したり、広告を打つだけでは、ブランドクエリを継続的に伸ばすことは難しいでしょう。むしろ地道にブランドストーリーを語り、専門知識を発信し、ユーザーの心に深く刻まれる体験を提供することが大切です。SNSやイベント、オウンドメディア、口コミなど、さまざまなチャネルでブランド名をアピールし、一貫性あるシグナルを発信し続けることで、ユーザーは徐々に「○○ブランド」そのものを探しに来るようになります。
特にECサイトの場合、商品を買う場という機能だけでなく、「ブランドの世界観を肌で感じられる場所」「知りたい情報が必ず見つかる場所」としての価値を高めることが不可欠です。そうすることで、「あのブランドはオシャレだったな」「あの商品が気になるからもう一回見に行こう」といった自然な想起が起こり、ブランド名を入力してサイトを訪れる習慣が形成されます。
さらにGoogleの検索アルゴリズムはブランド力を評価する方向に進化しており、指名検索が多いサイトが相対的に有利になる傾向が指摘されています。今後ますます「ブランドのあるサイト」 vs 「ブランドのないサイト」という構図が鮮明になっていくと考えられ、指名検索の重要性は増していくでしょう。E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の観点からも、ユーザーから「わざわざブランドを調べたいと思われるかどうか」は、サイト全体の評価に大きく関わってきます。
したがって、ECサイト運営者は、まず自社のブランドクエリの現状を正しく把握し(Google Search ConsoleやGoogleトレンドを活用)、どうすればユーザーに「ここで買いたい」「このサイトの情報をもっと見たい」と思ってもらえるかを考える必要があります。SEOだけでなくSNSやPR、オフライン施策を含む総合的なアプローチが求められますが、その先にあるのは「ブランドそのものに価値を見出してもらい、長く支持してもらえるビジネスモデル」の実現です。
今まで一般キーワードの流入に依存していたECサイトほど、ブランドクエリを意識した戦略へのシフトが大きな成長機会になる可能性があります。他社との差別化が難しいカテゴリーでも、ストーリーや専門性、独自の世界観が受け入れられれば、大手モールなどに頼らずとも安定的な売上を得られる基盤が築かれていきます。何より、ブランドクエリの多さは事業の体質を強くし、検索アルゴリズムのアップデートに振り回されにくい「不動の地位」を作り上げることにもつながります。
本記事で紹介した施策や事例を参考に、ぜひ自社ECサイトのブランド価値を高める方向へ一歩踏み出してみてください。品質の高いコンテンツやファンを大切にするコミュニケーションにより、ブランド名での検索が徐々に増えていけば、それこそがビジネスの安定を支える大きな財産となるでしょう。ブランドクエリを育てることは、単に検索数や売上を上げるだけでなく、ユーザーとの長い信頼関係を築き、ブランドが「選ばれる理由」を強固にするうえで欠かせない戦略です。